四男は、わが家の中でも特に成長が早い子でした。なんと、生後7か月でよちよち歩きを始めたのです。
「早いね」と言われるたびに、私もどこか誇らしい気持ちになっていました。でも、その成長の早さに、ある日ふと気づいてしまったことがありました。
――あれ? この子、まだハイハイしていないかも。
4人育児の中で育つ末っ子
当時、長男は6歳、次男は4歳、三男は2歳。そして四男は、まだ0歳でした。
昼間は、私ひとりで4人の子どもたちを見ていました。毎日が慌ただしく、正直、四男にかかりきりになる余裕はありませんでした。
四男も、それをわかっていたわけではないでしょうが、自然と兄たちの輪の中で過ごしていました。抱っこしてもらったり、ソファに座らせてもらったり。
歩行器に乗った四男は、兄たちについていこうと必死で足を動かしていました。
するとお兄ちゃんたちが押してくれることもあって、すごいスピードで部屋を飛び回っていました。
飛んでいきそうなくらい速くて、見ているこちらはハラハラでしたが、四男はご満悦の様子でした。
末っ子は、親だけでなく、兄弟にも育てられる。そんなことを実感する毎日でした。
ある日、気づいてしまったこと
ある日、四男が机につかまって立とうとしていました。長男がそっと支えると、そのまま伝い歩きまでしようとしたのです。
その姿を見た瞬間、私は驚きました。
「えっ、待って!」
そして次の瞬間、もっと大事なことに気づきました。
「この子、まだハイハイしてない!」
今なら、成長の順番には個人差があるとわかります。でも当時の私は、ハイハイはとても大切なものだと思っていました。足腰を鍛え、歩く準備をする大事な時期。ハイハイをたくさんした子は運動が得意になる、そんな話も耳にしていました。だからこそ、焦りました。
家中がハイハイ大会に
「これは大変!」
そう思った私は、すぐに上の子3人に協力をお願いしました。
「ハイハイのお手本を見せてあげて!」
すると、子どもたちは大喜び。「これがハイハイだよー!」「こうやるんだよ!」と言いながら、家中をハイハイで動き回り始めました。長男も、次男も、三男も、みんな真剣そのもの。まるで大事な任務を任されたかのようでした。
家中に「ハイハイ! ハイハイ!」という声が響き、まるで小さな運動会のようでした。その光景は、今思い出しても思わず笑ってしまいます。
兄たちに教わったハイハイ
最初は何が起きているのかわからない様子で、キョトンとした顔で兄たちを見ていた四男。
でもすぐに真似をしようとし始めました。
うまくできなくて真剣な顔になりながらも、少しずつ体を動かして。
そしてある瞬間、「ハイハイのほうが速い」と気づいたのか、目の色が変わりました。それからは嬉しそうに部屋中を動き回っていました。
ひと安心。……と思ったのも束の間。やっぱり、お兄ちゃんたちと同じように歩きたかったのでしょう。四男はその後、7か月でよちよち歩きを始めました。早い。とにかく早い。
末っ子は、みんなに育てられる
歩き始めた四男は、ますます目が離せなくなりました。でも、危ない場所へ行きそうになると、すぐにお兄ちゃんたちが追いかけてくれました。
「あっ、行っちゃう!」「捕まえた!」
そんなふうに、兄たちが自然と見守ってくれていたのです。四男は、私ひとりで育てたというより、家族みんなで育てた子だったのかもしれません。兄たちを見て、真似をして、どんどん成長していく。その姿は、まさに末っ子そのものでした。
成長の順番より、大切なこと
ハイハイを飛ばしかけたときは、本当に焦りました。でも今振り返ると、それも四男らしい成長の形だったのだと思います。兄たちが歩いているのを見て、「自分も同じようにしたい」と思ったのでしょう。
子どもの成長には、その子なりの順番があります。教科書どおりにいかないこともたくさんあります。でも、それでいい。
少しくらい順番が違っても、ちゃんと育っていく。四男が教えてくれたことのひとつです。
そして何より、あの日、家中をハイハイしてくれた兄たちの姿は、今でも私の大切な思い出です。


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