今は静かな家です。
でも子どもたちが小さかった頃は、
一日中、家のどこかから
「おかーさーん!」と呼ばれていました。
二階から、
キッチンから、
トイレから。
「ちょっときてー!」
「なにー?」
「聞こえなーい!」
そんなやり取りを、
毎日何回していたのかわかりません。
一番多かった言葉は「これ食べていい?」
特に多かったのは、
「これ食べていい?」でした。
冷蔵庫を開けては、
「これ食べていい?」
お菓子を見つけては、
「これ誰の?」
「もう食べていい?」
一人に返事をしたと思ったら、
次の子が来る。
「靴下どこ?」
「体操服知らない?」
「ハサミないー!」
私は一日中、
誰かの質問に答えていた気がします。
二階から呼ばれて、
急いで行ったのに、
「これ見て」だけの時もありました。
「それ、ここまで呼ぶ!?」
と思うこともありましたが、
子どもたちにとっては、
きっとその瞬間が大事だったんでしょうね。
4人いると、呼び声まで重なる
4人いると、
呼ばれるタイミングも重なります。
誰かが
「おかーさーん!」と呼ぶと、
別の子も負けじと呼び始める。
「ちょっと待ってー!」
と返しながら、
私は家中を行ったり来たりしていました。
それでも、呼ばれたら応えたかった
でも私は、
甘えてきた時には応えたかったんだと思います。
自分でできることも、
たくさんあったはずです。
それでも、
「お母さんやって」
「お母さん来て」
と言われると、
なるべく応えたい気持ちがありました。
4人を1人で見ていると、
いつもどこか
「足りないな」
と思っていたからかもしれません。
ちゃんと一人ずつ関われているのかな。
話を聞けているのかな。
そんな気持ちが、
いつも心のどこかにありました。
だから、
呼ばれた時くらいは、
応えたかったんだと思います。
急に静かになると、だいたい工作していた
静かな時間もありました。
急に家の中が静かになると、
いたずらを疑うこともありましたが、
4人で黙々と工作をしていることもよくありました。
新聞紙や段ボール、
トイレットペーパーの芯。
気づくと床いっぱいに広げて、
夢中で何かを作っていました。
遊び疲れて、
変な場所で寝てしまうこともありました。
玄関だったり、
机の下だったり、
時には廊下だったり。
見つけるたびに驚くのに、
あまりにも気持ちよさそうに寝ているので、
笑ってしまったのを覚えています。
じっとこちらを見ていた子のこと
兄弟の中には、
大きな声で呼ぶ子もいれば、
静かな子もいました。
静かな子だって、
本当は話したいこともあるし、
構ってほしい気持ちもある。
でも、
主張の強い兄弟に押されて、
なかなか言い出せないこともありました。
そんな時、
じっとこちらを見ていることがありました。
私はその視線に気づくと、
ニコッと笑い返したり、
目で「ちゃんと見てるよ」と伝えたりしていました。
すると安心したように、
また遊びに戻っていく。
今思うと、
あの頃の私は、
そんなふうに4人と関わっていたんだなと思います。
あの時間は、終わってみるとあっという間だった
あの頃は、
「一体一日に何回呼ばれるんだろう」
と思っていました。
返事をし続けて、
家中を動き回って、
毎日が本当ににぎやかでした。
でも今は、
家の中から
「おかーさーん!」と呼ばれることは、
ずいぶん減りました。
静かな家の中で、
ふとあの頃を思い出すことがあります。
あんなに何回も呼ばれていたのに、
あの時間は、
終わってみるとあっという間でした。
今、毎日呼ばれているお母さんへ。
うるさいと感じるその声も、
呼ばれなくなってはじめて、
宝物だったと気づきます。
どうか今日も、「おかーさーん!」を
大切に受け取ってください。


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