四男を出産したとき、長男は年長、次男は年少、三男はもうすぐ2歳でした。
夫は4人とも出産に立ち会ってくれましたが、四男のときは少し違いました。
上の子たちにも立ち会ってもらえないかなと思ったのです。
きっかけはテレビでした。
家族に囲まれた自宅出産の番組で、小学生くらいのお兄ちゃんが生まれた赤ちゃんのへその緒を切っている場面を見ました。
「いいなぁ」
そう思ったのです。
私も子どもたちと一緒に赤ちゃんを迎えたい。
今思えば、特別な理由があったわけではありません。
ただの私のわがままです。
夫は最初少し反対していましたが、子どもたち自身が立ち会いたいと言うならいいんじゃないかということになりました。
病院の先生に相談すると、
「嫌がったり騒いだりしたら外に出てくださいね」
という条件付きで許可をもらえました。
ただ先生は少し心配そうでした。
夫が初めて立ち会い出産をしたときも、病院側はかなり気を遣ってくれていたそうです。
分娩室で気分が悪くなったり、倒れてしまったりするお父さんもいるらしく、夫のために椅子まで用意してくれていたとか。
今回は年長、年少、そしてもうすぐ2歳の子どもたち。
先生も、
「男の子だから後で大丈夫かなぁ」
と少し心配していたようでした。
もちろん子どもたちの意思も確認しました。
長男は少し怖そうでしたが、次男と三男は興味津々。
そして当日を迎えました。
子どもたちが怖がらないように、分娩室では音楽を流してもらうことにしました。
選ばれた曲は、当時子どもたちが大好きだった戦隊ヒーローのゴーオンジャー。
先生も看護師さんも、
「こんな出産は初めてです」
と笑っていました。
ゴーオンジャーが流れる分娩室。
なかなか見ない光景だったと思います。
陣痛が始まり、家族みんなで分娩室へ入りました。
もちろん私は痛いのですが、それ以上に子どもたちの様子が気になって仕方ありません。
怖がっていないかな。
泣いていないかな。
そんなことばかり気になっていました。
しかも私は、
「簡単に赤ちゃんが生まれたと思ってほしくない」
などと考えていました。
そのせいで少し大袈裟に痛がっていました。
今思うと、出産中まで何をやっていたんだろうと思います。
そんな私をよそに、子どもたちは意外なほど落ち着いていました。
泣くこともなく、騒ぐこともなく、
「おかあさん、がんばれ!」
「おかあさん、がんばれ!」
と応援してくれていました。
ところが、そろそろ生まれそうという頃になって事件が起きました。
男の子たちが怖がらないようにと、先生は子どもたちを私の頭の近くにいてもらうよう配慮してくれていました。
ところが次男が移動したのです。
赤ちゃんが生まれてくるところを見たかったらしく、どんどん先生の方へ近づいていきました。
そして一言。
「見えない!」
さらに、
「先生、邪魔!」
なんと先生を手でどかそうとしたのです。
夫は慌てて、
「先生の邪魔しちゃダメ!」
と止めていました。
先生はびっくりしながらも、
「見たいの!?気をつけてね」
と笑っていました。
私は出産で必死でしたが、心の中では
「すみません……」
という気持ちでいっぱいでした。
そして無事に四男が誕生しました。
生まれたばかりの四男は、まず兄たちに囲まれました。
まだ生まれたてで体もぐらぐらなのに、代わる代わる抱っこされています。
子どもたちは、
「アブラベタベタ〜!」
と大騒ぎ。
恐る恐る抱っこしながらも、とても嬉しそうでした。
私はその後、ようやく四男を抱っこできました。
テレビで見たお兄ちゃんのように、長男にへその緒を切ってもらうことも考えていました。
でも長男は、
「それは怖い」
と断りました。
それもまた長男らしいなと思います。
あれから何年も経ちました。
先日、その話を子どもたちにしてみたのですが、誰も覚えていませんでした。
少し残念な気もします。
でも、記憶には残っていなくても、何かは残っているんじゃないかなと思っています。
そして何より、私は今でもあの日のことをよく覚えています。
ゴーオンジャーが流れる分娩室。
「おかあさん、がんばれ!」という声。
そして、
「先生、邪魔!」
と先生をどかそうとした次男。
四男にその話をすると、
「ゴーオンジャーじゃなくてクラシックを聞きながら生まれていたら、もっと才能が開花していたかもしれないのに」
と半分怒りながら、半分呆れていました。
そうかもしれません。
でも、にぎやかで騒がしくて、ちょっとハラハラして。
そんな我が家らしい出産だったなと思います。


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