その時は、ただ好きだっただけ

母である私のこと

我が家には息子が4人います。

子育て中に趣味の時間を持つなんて無理だと思っていました。

よく、「子どもがお昼寝している間に好きなことをしていました」という話を聞きますが、我が家にはそんな優雅な時間はありませんでした。

誰か一人が寝ていても、残りの子どもたちは元気いっぱい。しかも、その時間は起きている子との大切な時間でもあります。

だから私は、4人が機嫌よく遊んでいる隙を見つけては、立ったまま少しずつ編み物をしていました。

子どもたちは年齢が近かったこともあり、自分たちで遊びを考えるのが得意でした。今思えば、何が面白かったのかわからないような謎ルールばかり。それでも4人でケタケタ笑い転げながら遊んでいて、その様子を横目で見ながら、一目、二目とかぎ針を動かしていたのです。

ただ好きだから続けていた

私は子どもの頃から、手芸や工作など手を動かすことが好きでした。なかでも編み物は特別でした。

一本の糸が、自分の思い描いた形になっていく。無心になれる。そして毛糸とかぎ針があれば、どこでもできる。子育て中の私にとって、とても続けやすい趣味だったのだと思います。

子どもたちの帽子や小物を作ったり、あみぐるみを作ったり、お友達へのプレゼントにバッグやポーチを編んだり。子どもたちからのリクエストもたくさんありました。好きなキャラクターのあみぐるみ、仮装用の衣装、変身ベルト。大きくなってからは、ルービックキューブを入れるポーチまで。

「次はこれ作って!」と次々に言われるので、なかなか暇にはなりませんでした。それでも作るものがなくなると、アクリルたわし、収納かご、植木鉢カバー、こたつカバーまで作っていました。

振り返ると、本当にただ編むことが好きだったのだと思います。

今でも残っている、お弁当のあみぐるみ

子どもたちのお気に入りは、お弁当のあみぐるみでした。おにぎり、たこさんウインナー、卵焼き。本物のお弁当のおかずを小さなあみぐるみにしたものです。

兄弟でお弁当屋さんごっこをしたり、並べたり。楽しそうに遊んでいました。

そして驚いたことに、子どもたちが大きくなった今でも、そのあみぐるみを捨てずに持っていてくれるのです。

私はすっかり忘れていました。でも子どもたちにとっては、大切な思い出のひとつだったのかもしれません。

思いがけず仕事につながった

そんなふうに楽しみながら続けていたある日、思いがけないことが起きました。育児サークルや地域のイベントを通して、講師のお話をいただいたり、委託販売のお誘いをいただいたりするようになったのです。

とても驚きました。私はただ好きで続けていただけでした。「いつか仕事にしよう」そんな大きな目標があったわけではありません。それなのに、自分が作ってきたものを必要としてくれる人がいた。それが本当に嬉しかったのです。

息子ばかりの我が家では、作品が活躍する場面はそれほど多くありませんでした。だからこそ、誰かに喜んでもらえることが新鮮で、ありがたく感じました。

育児が一番だった

それでも私は、仕事として大きく広げることはしませんでした。育児が一番楽しかったからです。

正直に言うと、私は一度にたくさんのことを器用にこなせるタイプでもありません。だから、育児を大切にしながら、できる範囲で続ける。それが私にはちょうど良かったのです。

焦らず、無理せず、その時できることをやる。そんなペースで続けてきました。

あの時間は無駄じゃなかった

子育てがひと段落した今、私はハンドメイドでの起業に向けて準備を始めています。もちろん不安もあります。でも同時に、嬉しい気持ちもあります。これからも好きなことを続けていく理由ができたからです。

時間はかかりました。遠回りだったように見えるかもしれません。それでも、あの頃の時間が無駄だったとは思いません。その時その時で、自分にとって大切なものを優先しながら、好きなことを続けてきた。だからこそ、今につながっているような気がするのです。

今の自分から、あの頃の自分へ

もし4人の子育てに追われながら、立ったまま編み物をしていた頃の私に声をかけるなら、「上手に息抜きしてるね」そう言いたいです。毎日が慌ただしくて、自分では気づいていなかったけれど、あの時間は確かに私を支えてくれていました。

そして、「好きなことがあるって、ありがたいね」とも伝えたいです。

今でも残っている、おにぎりやたこさんウインナーのあみぐるみを見るたびに、子どもたちと過ごしたあの頃の時間まで一緒に残っているような気がします。

その時は、ただ好きだっただけ。

でも、その好きは子育ての日々を支え、今の私にもつながっています。

焦らなくていい、と今なら思います。その時その時で、自分にとって大切なものを見失わずにいれば、好きなことは消えない。あの頃の私が、そのことを教えてくれた気がするのです。

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