「んっ。」と差し出された一杯

子育ての出来事

私は暑いのも苦手ですが、冷房もあまり得意ではありません。

連日の暑さで、家では冷房の効いた部屋で過ごす時間が増えています。

その日も夕食後、少し寒いなと思いながらも、何も羽織らずにいました。

すると、お腹がキュルキュル……。

「あ、冷えたな。」

冷房で体が冷えて、お腹を壊してしまったようです。

しばらくトイレにこもり、やっと出てくると、リビングにいた四男が、

「どうしたの?」

と声をかけてきました。

「寒くてお腹壊した。」

「大丈夫?」

心配してくれた四男。

でも、そのあともまたお腹がキュルキュル……。

再びトイレへ。

何度か繰り返して、やっと落ち着いてリビングに戻り、ソファに座っていました。

すると、キッチンにいた四男がこちらに来て、

「んっ。」

とグラスを差し出しました。

中には、梅肉エキスとはちみつをお湯で溶いたもの。

一瞬、

「えっ?何?」

と思いました。

でも、すぐに気づきました。

「あ、梅肉があったんだ。」

わが家では、お腹が痛い時や気持ち悪い時に飲む、いつものものです。

子どもたちも小さい頃から飲んできて、今では自分で作って飲むこともあります。

私はお腹が痛いことで精一杯で、梅肉のことなんてすっかり忘れていました。

そんな私の様子を見て、四男は何も言わずに作ってくれていたのです。

「ありがとー。」

「えー、嬉しいー。」

思わず、しみじみ伝えました。

味は正直、覚えていません。

濃かったのか薄かったのかも分からないくらい。

でも、すごくありがたい味でした。

四男は、特別なことを言ったわけでもありません。

心配そうにするわけでもなく、いつも通りの顔で、当たり前のように「んっ。」と渡してくれました。

その自然な姿が、また嬉しかったのです。

母親になると、誰かのために動くことの方がずっと多くなります。

ご飯を作ったり、体調を気にしたり、困っていないか考えたり。

もちろん、それが嫌なわけではありません。

でも、何かをしてもらうことって、案外少ないものです。

だからでしょうか。

この日、何気なく差し出された一杯が、とても嬉しかった。

四男にとっては、いつもの梅肉エキスだったのかもしれません。

でも私にとっては、忘れられない一杯になりました。

お腹は痛かったけれど、心は温かくなった夜でした。

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